転職の記事です

5月 31, 2009

「転職してええか」彼が切り出したとき、私はまたかと思いました。今まで何度もあったことなので、私も驚かなくなっていました。数日前から彼を観察して、うすうす気づいてもいました。 社会人になってから、建設関係の会社の営業職ばかりを転々としていました。ぜんぜん違う仕事にチャレンジするということはなく、いつも同じ職種でした。 家族や友人は、夫の「転職グセ」を心配し、批判しました。私が甘やかすからいけない、もっとしっかりしてもらわなきゃいけない、なんて言われたりもしましたが、私は耳を貸しませんでした。 彼は言いました。「俺、やっぱり職人をやりたい」。その目には力がこもっていました。私はそれを見て、今回は大丈夫だと思ったのです。 力仕事も細かい作業も、大きな手で器用にこなしてしまうところ。寡黙で慎重なところ。言われてみれば、彼は職人にこそ向いているのかもしれません。長年大工をやってきた彼の父親にもそっくり。彼は父親から、職人にふさわしい気質を受け継いでいたのです。 「いいよ、転職してみたら。私、あなたは営業より職人の方が絶対向いてると思う」私の言葉に、彼はホッとしたように笑みを浮かべました。 1ヶ月に渡る転職活動の末、彼は隣市の小さな建設会社に、施工管理担当者として採用されました。彼の希望通り、職人としての再スタートが決まったのです。 他の会社でも数社から内定をもらいました。私は、彼の今までの転職歴はマイナスになると思っていたのですが、いろんな現場を見て勉強していること、簡単な施工ならすぐできるくらいの技術をすでに身につけていたこと、そして彼の熱意がプラスに評価されたようです。新しい会社でも、能力は正当に評価され、彼はどんどん仕事を覚えていきました。1年後には主任に抜擢されるまでになったのです。 あれから3年の月日が流れ、彼はもう立派な施工管理者として現場を仕切っています。辛いこともあるけど、遣り甲斐をもって働いているようです。現場の仕事は残業や休日出勤もないので、家族で過ごす時間も増えました。今では、3年前の彼の決心に感謝しているんです。
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